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「うーん、あたしじゃなくて、イトコなんだけど……」
アイちゃんのイトコってことは、うちも、じいちゃんつながりか。
僕らは、じいちゃんが再婚した京都のばあちゃんの孫だ。
でも、なんか綺麗な人だったらしく、じいちゃんは死ぬまで、この出雲の人のことを忘れられなかったみたいなんだよね。
「じつは、イトコの婚約者が行方不明になって。警察に行っても相手にしてくれないんだって。
それで思いだしたけど、かーくんとこ、探偵しちょったが?」
「つまり、人捜しの依頼ってことか」
人捜しは猛の大得意分野だ。
普通の探偵が何ヶ月もかかる依頼でも、うちの猛なら一日で片づけるね。
なんたって、念写探偵だから。
「割安で、お願いできんかなあ?」
「うーん、わかった! アイちゃんの頼みだ。無償で調べてあげるよ」
「えっ、ほんと?」
「毎年のカニのお礼だよ」
高価なカニを毎年、六杯、僕、猛、じいちゃん(今は蘭さん)×2も送ってくれるんだから、これくらいはしなくちゃ。
この電話があったのが、三月の二十日すぎ。僕らは急きょ、出雲へ旅立つことになった。
もちろん、これを蘭さんが黙認するわけがない。
「僕、留守番なんて、嫌ですよ。さみしいじゃないですか。ねえ、ミャーコ」
ミャーコは、うちの愛猫。ハンパに長い毛の白猫。めす。八歳。蘭さんにメロメロ。
「僕も、ついてっちゃおうかなあ。二人が調査してるあいだは、ホテルで自主カンヅメになってます。ねえ、ミャーコ。ミャーコも行っちゃう?」
「みゃん。みゃ、みゃーん」と、ミャーコは嬉しそうに鳴いた。
行く、行く、蘭さんとなら、どこでも行くぅ、という意味だったが、残念! うちの子は三毛ではないから、ホームズばりの活躍は期待できない。
しかたない。ミャーコは川西さん(猛の友達。猫好き)に預かってもらうか。
で、僕ら三人は出発した。三月二十五日のことだ。
世の中が決算期だというのに、僕らは新幹線で岡山まで。そのあと特急に乗りかえて、ぶらり旅だ。
それにしても僕らは、どこへ行っても注目のまと。
列車内でも駅構内でも、視線、浴びる。浴びる。
あいかわらずだなあ。蘭さんパワー。
断言しよう。
僕は女の子みたいと言われるのがコンプレックスではあるが、まあ十人並み以上には整ってるほうだと思う。
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