一章 不死伝説の村

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「うーん、あたしじゃなくて、イトコなんだけど……」 アイちゃんのイトコってことは、うちも、じいちゃんつながりか。 僕らは、じいちゃんが再婚した京都のばあちゃんの孫だ。 でも、なんか綺麗な人だったらしく、じいちゃんは死ぬまで、この出雲の人のことを忘れられなかったみたいなんだよね。 「じつは、イトコの婚約者が行方不明になって。警察に行っても相手にしてくれないんだって。 それで思いだしたけど、かーくんとこ、探偵しちょったが?」 「つまり、人捜しの依頼ってことか」 人捜しは猛の大得意分野だ。 普通の探偵が何ヶ月もかかる依頼でも、うちの猛なら一日で片づけるね。 なんたって、念写探偵だから。 「割安で、お願いできんかなあ?」 「うーん、わかった! アイちゃんの頼みだ。無償で調べてあげるよ」 「えっ、ほんと?」 「毎年のカニのお礼だよ」 高価なカニを毎年、六杯、僕、猛、じいちゃん(今は蘭さん)×2も送ってくれるんだから、これくらいはしなくちゃ。 この電話があったのが、三月の二十日すぎ。僕らは急きょ、出雲へ旅立つことになった。 もちろん、これを蘭さんが黙認するわけがない。 「僕、留守番なんて、嫌ですよ。さみしいじゃないですか。ねえ、ミャーコ」 ミャーコは、うちの愛猫。ハンパに長い毛の白猫。めす。八歳。蘭さんにメロメロ。 「僕も、ついてっちゃおうかなあ。二人が調査してるあいだは、ホテルで自主カンヅメになってます。ねえ、ミャーコ。ミャーコも行っちゃう?」 「みゃん。みゃ、みゃーん」と、ミャーコは嬉しそうに鳴いた。 行く、行く、蘭さんとなら、どこでも行くぅ、という意味だったが、残念! うちの子は三毛ではないから、ホームズばりの活躍は期待できない。 しかたない。ミャーコは川西さん(猛の友達。猫好き)に預かってもらうか。 で、僕ら三人は出発した。三月二十五日のことだ。 世の中が決算期だというのに、僕らは新幹線で岡山まで。そのあと特急に乗りかえて、ぶらり旅だ。 それにしても僕らは、どこへ行っても注目のまと。 列車内でも駅構内でも、視線、浴びる。浴びる。 あいかわらずだなあ。蘭さんパワー。 断言しよう。 僕は女の子みたいと言われるのがコンプレックスではあるが、まあ十人並み以上には整ってるほうだと思う。
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