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「あ、透。おつかりー」と礼央。
奈央子がハッとして階段の三段目から下を見下ろすと、巨大な赤いマッシュルーム…では なく、渡辺 透の姿があった。
と、背後では、引き戸がパタンと音を立てて閉まったところだった。今 帰って来たらしい。
「…………」
無表情で、無言を貫く優。
すると奈央子が、階段の三段目に立ち止まったまま、透の方を見て叫んだ。
「優くんにとって私は『対象外の女』らしいから、それは絶対に ありませんので!」
タンタンタンッ
ピシャン!
しーん………。と静まり返る、団らんの間。
「…何おまえ、そんな事言ったのかよ。さっそく」
沈黙を破ったのは、透の静かな声だった。礼央も釣られてニヤけ出す。
しかし優は、無言のまま、二階への階段を上がって行った。
「俺ですら、対象外とは思えねーぞ?あの子」と透。
「ってか透はむしろ、女の子は皆 対象外なんでしょー」
「あ。知ってた?」
「何をいまさら!」
団らんの間には、透と礼央の会話だけが響いていた。
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