第5章:優見舞い申し上げます

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奈央子は、校内にある売店に来ていた。 「何が良いかなあ」 売店にある中で、風邪を引いた時に食べれるものは限られている。 「おにぎりにしようっと…って、あ」 おにぎりが沢山並べられている棚に手を伸ばすと、誰かの手とぶつかった。 奈央子が右側を振り向くと、そこにいたのは野城だった。 「太田さんもおにぎり?」 売店の空いた窓からは、弱い風が流れている。野城のストレートの髪が揺れた。 「うん。」 ちょっと急ごう、と奈央子は思った。 別に野城が話かけて来そうな雰囲気だからではなく、本当に昼休みには時間が限られているからだ。 奈央子は棚から おにぎりを三つ取り、支払いを済ませ、おにぎりが入った透明のビニール袋を受け取ると、売店の緩やかなガラスドアを開閉した。 急ぎ足で、チョコ寮の方角へと向かう。 背後で、再びドアを開閉する音がした。奈央子は振り向かなかったので、見てないが、野城だと思った。 「太田さん。もしかして、例の場所に行くの?」
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