第5章:優見舞い申し上げます

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「へっ、変な人だね、野城くん。離してよ、優は風邪引いてるんだってば。大声 出すよ!?」 しかしそんな度胸など奈央子にはない。それを分かっているのか、野城は奈央子の手首を離さない。奈央子の細い腕は、野城の手には一掴みだった。 「風邪引いてる時に、君がお見舞いなんかに行ったら、優は絶対 君の事を好きになるだろう?そんなの嫌だから、こうやって止めてる…」 難しい男心だ。と奈央子は思った。 とその時、 キーン コーン カーン コーン… 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。 奈央子は「あーあ…」という顔をした。 もう、最悪だ!! 「俺も一緒に行って良いなら、離してあげるよ。どうする?」 じゃあ「嫌だ」と言ったら、ずっと持っているのか…と奈央子は心の中で突っ込んだが、時間は無いし、ついに諦めた。 モテる女って大変だわ… 「わかった。ついて来て良いよ!離して!」 野城はやっと腕を離した。 奈央子は自由になった途端に走り出した。 そして、野城も奈央子の後ろから同じように走って来た。 タッ タッ タッ あかねちゃんに後でメール入れとかなきゃ… 授業遅れるって。
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