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「へっ、変な人だね、野城くん。離してよ、優は風邪引いてるんだってば。大声 出すよ!?」
しかしそんな度胸など奈央子にはない。それを分かっているのか、野城は奈央子の手首を離さない。奈央子の細い腕は、野城の手には一掴みだった。
「風邪引いてる時に、君がお見舞いなんかに行ったら、優は絶対 君の事を好きになるだろう?そんなの嫌だから、こうやって止めてる…」
難しい男心だ。と奈央子は思った。
とその時、
キーン コーン カーン コーン…
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
奈央子は「あーあ…」という顔をした。
もう、最悪だ!!
「俺も一緒に行って良いなら、離してあげるよ。どうする?」
じゃあ「嫌だ」と言ったら、ずっと持っているのか…と奈央子は心の中で突っ込んだが、時間は無いし、ついに諦めた。
モテる女って大変だわ…
「わかった。ついて来て良いよ!離して!」
野城はやっと腕を離した。
奈央子は自由になった途端に走り出した。
そして、野城も奈央子の後ろから同じように走って来た。
タッ タッ タッ
あかねちゃんに後でメール入れとかなきゃ…
授業遅れるって。
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