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さわさわ…
中庭の大きな木から、黄色いイチョウの葉が、冷たい風に揺られ、空を舞っている。苺学園は自然が多いのだ。
秋の風より、冬の風。
空は晴れており、午後二時だということもあって、日光は照っているものの、寒かった。
奈央子は、混乱の入り交じった、信じられない顔をしていた。
何かを聞き間違えたに違いない。
中庭の木から、女の子軍団と奈央子の様子を見ているのは、優。
「野城くんが言って来たんだよ?男子寮に住み込んでるとか言う噂。先生にバレたら、不味いんじゃない?」
女の子軍団は「ありえなーい」とわざとらしく言って、軽蔑の眼差しで奈央子を見た。
「アイツ…」と呟いた直後、優は軽い咳をした。ただ、優の姿に気付く者は誰もいなかった。
「ほ、本当に、そんな事はあり得ないんです!じゃあ私、急ぐので…!」
「あっ」と女の子軍団が叫んだ時、奈央子は走り出していた。
逃げるが勝ち!
奈央子はそう学んでいた。
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