第12章:貴方が愛した海ならば。

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別に、母さんから直接「お父さんからお金が貰えないの」とか「振り込みがないの」とか、言われたわけじゃない。 皮肉なことに幼いながらも僕が、勝手に気付いてしまったんだ。 最初に違和感を感じたのは、ある日 突然母さんが、『働きに出る』『バイトしてみようかな』とか言い出したとき。 それも よそよそしい笑顔でね。 違和感ったらこの上ない。 母さんは専業主婦というやつで、僕が産まれてから一度も働いていた事はないのに。むしろ、幼い僕ですら、父さんという人間がいながら、母さんは働く必要はない。と思っていた。 僕も直接 母さんに聞けなくって、恐らく母さんとしてもそんな話を僕にしづらかったと思う。 僕が産まれてからそれまでは、節約の『せ』の字も言ったことないような母さんが、突然、『無駄に電気をつけないようにね』とか言い始める。 いつも二人で連れてってくれたレストランにも、連れてってくれなくなる。 僕が産まれてから、ブランド物の服やアクセサリーを毎月大量に買っていたのに、急に買わなくなったから、僕が問うと、「もうブランド物は飽きちゃったから、売っちゃったのよ」とか言う。 とにかく、極力お金を使わないようになる。
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