第12章:貴方が愛した海ならば。

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「…る」 「…つる」 「充」 中学三年生の、ある日のこと。 母さんが僕の腕を掴んで、弱々しく話かけた。 昔は 綺麗だ美人だと言われていた顔はやつれ、目の下には青いクマ。頬っぺたは痩せて、顔の輪郭のバランスが悪い。 毎月 高級美容院でしてもらっていた高級トリートメントのおかげで艶やかだったロングの黒髪も、パサパサ。肌は荒れ気味。 「高校はね、苺学園にするのよ。ここなら、父さんは…学費を出してくれるらしいのよ。実は、おまえが産まれたころから決めていたのよ。だから、苺学園には絶対に合格するのよ?」 母さんの目には涙。 エスカレート式で大学まであるマンモス私立校だから、このまま そこの高校に行くつもりだったけど、僕は迷わず頷いた。 だって学費が払えないと、行けないし。 「うん…わかったよ。苺学園にする。任せてよ、何も心配しないでね?」
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