第12章:貴方が愛した海ならば。

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実は僕は、中学校に入学してから、母さんには内緒で、バイトをしていた。 そして、母さんには内緒で、光熱費の引き落としの口座を、僕のバイト代から引かれるように口座を変更しておいたよ。最後まで 母さんに気付かれなかったのは、母さんの疲労が物語ってる。 学校はバイト禁止だけど、とてもじゃないが母さんの給料だけじゃ、厳しいのは察していたから。 世間では僕の通う学校は、お嬢様お坊ちゃん学校と言われている。幼稚園から大学までエスカレート式。 学費はかなり高く、成長期で食べ盛りの僕に加え、かなり堪えたのが、家の光熱費。 何より、我が家の場合、まず物理的に『普通』じゃない。 中学生の男の子一人と、まだ四十歳にも満たない女性一人にとっては、無駄にデカイ。 夜、玄関で靴を脱ぎ履きするだけなのに、大きなシャンデリアに通電させなきゃならないから、それだけでもままならない電気代。ガス代。 水道代も、節約したってしきれない。庭にある噴水は止めたけど。トイレだってシャンデリア。ちなみに水を流すときにイルミネーションになる。いらんわ。 音姫もあるんだけど、自動的に廊下までサウンドを流してくれる特注品。そもそも学校から帰っても家には僕しかいないのに。いらんわ。 広い庭は人工養成芝で、草の下に自動的に水が常に流れてる構造になってて、これは節約するにも良心が痛む。 何より、家賃も高い。
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