第12章:貴方が愛した海ならば。

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僕は、父さんのことは詳しくは知らないけれど、『大きな会社の社長さん』なんだって。それで、僕の家も『大きい』んだって。 小学生の低学年の頃から、僕は毎晩 机に向かっていた。時間があれば、向かっていた。やりたい遊びも惜しんで、ひたすら勉強をしていた。 学校が終わると、クラスの皆は「これから遊ぼー」という雰囲気の中で、僕は一人すみやかに学校を出て、塾へと向かった。または家に帰った。家庭教師が来るから。そんな日々だったと思う。 難しいことは考えてない。それが当たり前だと思っていたから。抵抗もない。いま思えば、僕の幼い頃の性格は、丁度都合が良かったのかも知れないな。 でも、いつも応援してくれるのは、兄弟や友達もいない僕の唯一の家族である、母さんだけだった。 なぜなら、父さんの姿は、僕は産まれてから一度も、見た事が なかったから。
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