第12章:貴方が愛した海ならば。

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幼稚園を卒園し、エスカレート式で付属の小学校に入学した。 生活費と学費とかは毎月、父さんから振り込まれていた。それも母さんがいつも微笑みながら「使いきれないわ」って言うくらい、無駄に莫大な金額らしかった。 毎月 母さんにアメリカから振り込まれるらしいお金のおかげで、僕は裕福な幼少時代を送っていたと思う。 端から見ても、単身赴任の家庭だとは思えないような。 そう、 あ の 頃 ま で は 。 あの時は、『本当の事』は知らなかったんだ。 仕事で忙しいんだろうって。今日も帰って来ないんだって。良い成績だったテストの結果を見せたくても、仕方ないなって。 いつも母さんが 「とにかく、今後の父さんの会社の運命は、あなたにも係っているのだからね」 なんて、幼い僕には意味のわからないことを言われても。 でも僕は、バカだった。幼い僕には わかるまい。毎日勉強していても、『子供』の僕には、母親の発する台詞は理解できない。 そう僕は もうすでに 狭苦しい社会の入り口に、立たされていたんだってこと。
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