第13章:愛しのラビリンス-前編-

13/27
前へ
/27ページ
次へ
ガチャ ルナが開ける扉の音が、重たく感じた。扉の音は、いまの自分の心理状態を表してくれている様に思えた。 扉を開けたルナは後ろを振り向き、戸惑い顔の奈央子に「さぁ遠慮せずに入って」と言った。 「お、おじゃましまぁす…」 奈央子の暗くて沈んだ返事を気にすることなく、ルナは威勢よく部屋の中へと進んで行く。奥で「お客さんを連れて来たの。良いかしら?」という彼女の声が聞こえた。 だが奈央子は部屋の中を見て、思わず驚いてしまった。 六号室とは比べ物にならない位に、狭いのだ。六号室が広過ぎるのもあるが、部屋は二つだった。一般的になら、スタンダードルームに分類されるであろうクラスの部屋だ。 ゴージャス感は あの部屋と比べて、殆ど無い。 と言っても、二人が『金持ちの娘・息子』だと知っているからだろうか。そんな二人だからこそ、余計に違和感を感じるのだ。 奈央子が玄関から先に進まないでいると、ドア(玄関から部屋までの廊下にもう一つドアがあったのだ)の奥から、ついに、野城 充の声が聞こえた。 聞き覚えのあるテノール。奈央子の心は益々重たくなった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加