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「んえっ?ひっ、羊!?」
奈央子は急に現実に戻されるのも束の間、反動的に口を開いた。キョロキョロと辺りを見渡し始める奈央子を見て、野城はパソコンに手を置いたまま微笑する。
そして、奈央子の背後からその”ひつじ”が出てきた。
もちろん”ひつじ”では無く、”人間”である。
「かしこまりました。すぐにご用意します。お嬢様、お座りになって少々お待ち下さい」
「そうそう、ベッドにでも座りなよ。いつまで立ってんのー。そんなに堅くならなくて良いから」
野城がノート型パソコンをタイピングする音に加え、隣のキッチンからはカチャカチャという食器の音だけになる。
「……………」
どうやら見るからに、その”ひつじ”とは、執事のことらしい。
その男性は堅い表情で、神経質に紅茶パックを取り出し、カップにお湯を注いでいる。
白髪一本ない、黒くて艶のあるオールバックの髪。 サラリーマンの格好と同じ黒いスーツ姿の彼は、優が『オッサン』と呼んでいた あの小太りの朗らかな男性とは、全く正反対の雰囲気だと奈央子は思った。
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