第13章:愛しのラビリンス-前編-

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「仕方ないわよ、私たちの部屋は狭いんですもの。そちらは随分と広いお部屋みたいだって聞いたわ?」 「良いじゃん、もう。俺は良いよ?狭くても。君と近付けるからね」 どくん…っ 奈央子は胸に変な感触を覚えた。 なにか私に聞かせるように…、野城くんはそんな言い方 をしたみたいに、聞こえたの。 しかしマイプリンスからそんなことを言われたルナは、ますますハイテンションになった模様で、ニマニマとしている。 結局、私は何しに来たんだろう……。と奈央子は唇を噛み締めた。 と同時にバタンという音がし、ひつじが戻って来た。 開いた携帯電話を片手に、野城の前で立ち止まると、硬い表情で野城を見下ろす。 「何なのよ?」とルナが問うと 「…充様。高松様から…あの子の召し使いの方から、お電話です。昭仁様が危篤(きとく)状態との事ですが…、病院へ行きますか?」 ひつじがそう言い終えた途端に、ルナも野城も無表情になった。 奈央子は何となく、私は席を外すべきなんだという気持ちになった。
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