第13章:愛しのラビリンス-前編-

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(げ…っ!!) 「あら!優さんの…。ちょっとそこ、退いてちょうだい?」 わーん こんな所でまた会うなんて! いやいや、そうじゃなくてっ! 「は、はい!どうぞっ」 奈央子が体を移動させる前に、ルナは奈央子が使っていた洗面所に もう割り込んで来た。 彼女の綺麗な水色のドレスにぶつかりそうになるのを、奈央子は間一髪で逃れた。 奈央子は、辺りを恐る恐るきょろきょろと見回した。 えと、他にも洗面所たくさんあるんですが… どうして わざわざ私の使ってた所に? まぁ別に良いんだけど。 奈央子は優が待っているのですぐに部屋に戻るつもりだったが、やはりどうしても彼女の事が気になった。 野城くんの”フィアンセ”…。 その意味は奈央子でも分かる。 優が言ってた話を思い出すと、奈央子からしてみれば、まだ 名前も知らない目の前の相手なのに、なぜだか胸が苦しくなった。 とりあえず奈央子は、このゴージャスなトイレを物色するフリをしながら、ルナの様子を見て、話かけるチャンスを待つ事にした。 カチャ カチャ ルナは奈央子から奪った洗面所で、大きい白の ふわふわファーのポーチの中を、ガサゴソと、コスメを取り出しては化粧をしている。 ふと、その化粧品に、奈央子の心臓がドキッと揺れた。
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