〈5〉 ミステリー研究会とシャーロッキアン達

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「わかった。ダイブ説は消去でいいんだね。じゃ、カイの言うところの『推理』を続けよう」 蓮斗が「推理ノート」にメモを取りながら言った。 「やっぱり自殺なのかな?不謹慎だけど、オーディションに落ちて、発作的に飛び降りた…とかならまだ理解できるんだけど」 「自殺する人間の心理なんて、本人にしかわからない…いや、追い詰められた本人にもわからない深い闇がある。そこは犯罪者と紙一重で病的な破壊衝動が外に向くか、内に向くかの違いさ。 例えば…だけど、二次オーディションに受かって大喜びした後、急に大きな不安に襲われた…いや、人間の心理というのはそれほど複雑なんだよ。慶事の後に鬱病を発症する例だってあるんだから。マリッジブルーなんていうのが典型的な例。 飛び降りを選ばなかったのは、自分の顔や身体が傷つく方法を嫌った。…あるいは給水タンクから発作的に子宮や羊水を連想した。死んで生まれ変わりたいと思った…深層心理にある胎児に戻りたいという願望が突発的に目覚め…」 「ちょっと、ちょっと!カイったら!」 勝手に置いてかないで!お願い、こっちに戻って来て! カイって一日中こんなこと考えて過ごしてるのかな…あたしだったら、気が変になりそう。
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