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あたしは通学用の自転車を漕いで河川敷のサイクリングロードを一人、走っていた。
最近で一番残暑の厳しい日だった。夕方、いつもなら遊歩道を散歩している人々や、グラウンドでスポーツする子ども達の姿がまだない。
考えてみたら、あたしのいつもの下校時刻より早い。
(家に帰っても、しばらく一人だな…戸締まりしておけば大丈夫か)
あたしの自転車はファッションに合わせてクラシック風のデザインだ。前輪が後輪より大きく、黒色のハンドルやスポークが流れるように優美な曲線を描いている。
…ただし、現代の工業技術の産物だから、シャーロック・ホームズの生きた時代のそれとは乗り心地が全く違う。ママチャリとあまり変わらない快適さだ。
難を言えば値段の高さだ。高校に入学する時、どうしてもこの特別制作の自転車が欲しくて、渋る両親を説得するために春休みは親戚の店に頼み込んでバイトさせてもらった…懐かしいな。
あんまり怖いことを考えたくなくて、そんな思い出に一人、浸っていた。
と、
キィ……キィ……キィ……
規則正しく、軋むような金属音が背後に聞こえる。
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