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後ろから自転車が来る……と思った。
古いママチャリだから軋んでいる音がするんだろう…。どこかのおばさんが買い物か夕方のパートに行くところかもしれない。あんまり深くは考えなかった。
しかし。
しばらく自転車を漕いでいると、なんだか付けられているような変な感覚に襲われてきた…。
あたしが速度を緩めれば向こうも遅くなるし、速度を速めると向こうもスピードを上げる。
それに、錆びた金属音に時折混じる、何かを引きずるようなズルズル…カラカラ…という不快な音。
相手は一定間隔で距離を置いて…こちらをうかがっている?。
微かな音が変化する。キィ…キィ…キィ。
気づくと、河川敷の一本道はずっとさきまで無人だった…目の橋の上は車道。ここから叫んでも声は届きそうにない。土手の上に上がるためにはまだ500mほど漕がなければ。
思い過ごしであることを祈って、あたしはペダルに力を込めた。すると後ろの自転車も俄然加速する。
橋をくぐって左側…河岸の方にゲートボール場とポプラの木立があって、道がカーブするため死角ができる。
あたしは後ろの追跡者を振り切るために、全速力で自分の自転車を漕いだ。
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