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自転車に乗った全身黒コーデの不審者が白昼堂々、追い抜きざまにあたしを鉄パイプで殴打するか…それ以上の危害を与える気満々だったのはもはや疑う余地がない。
あたしが咄嗟に隠れたのには気づかないまでも、握っていた鉄パイプがあたしの鼻先を掠めて物置の壁に当たり、それが跳ね返って再びあたしの額を直撃したのだ、と一秒位で理解する。
カランカラン、と乾いた音を立てて、僅かに血痕の付いた鉄パイプが路上に転がる。
恐怖と気味悪さでぞっとした。
とにかく、逃げるか隠れるかしなければ。
と、急に右目が開けられなくなった。汗が染みたのかと思いブラウスの袖で咄嗟に拭いた。……クラシックレースの白い袖口が真っ赤に染まっていた……額からの出血が目に入ったのだ。あたしは目眩を起こして再びその場に座り込んだ……。
そんなこと言ってる場合じゃない、とは思うんだけど、あたしは自分の血さえも苦手なのだ。
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