〈6〉 ゴスロリ女子高生vs謎の自転車乗り

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鉄錆と血の匂い。 ビルの屋上の死臭を思い出す。 嫌だ。死にたくない。 そうこうしているうちに、左目にもぼたり、と血が入って視界があっという間に赤く、暗くなる。 追跡者が異変に気づき、数十m先で嫌なブレーキ音をたてて止まった。自転車を置き、こちらに歩いてくる気配がする。 逃げる、と言っても後は見晴らしのいい広場か河しかない。あとは原始的だけど、あたしの存在に気づいてないことをひたすら信じてさらに木立の奥に隠れるか。 いや、鉄パイプの血痕に気づいたら、いくら何でもターゲットが近くにいると見て探すだろう。隠れる場所なんてもう、そんなにない。 いちかばちか、鉄パイプを相手より速く取り上げて応戦する? あたしは目が開くように祈りながら、必死でブラウスの袖口で両目を拭った。怖すぎて涙が溢れて、余計収拾がつかない。
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