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あたしの中にほんの0.1秒足らず。天啓のように蘇ったシーン…。
あの屋上で、不審者に出くわした時。
あたしは恐怖のあまり動けなかった。カイ達が助けに来てくれなかったら、どうなっていたか…。
でも変わりに憎っくき犯人は煙のように消え、今現在もあたしの平穏な学園生活を脅かしているではないか!
(そんなの…悔しい!)
また、逃げられてたまるか!
あたしは知らず知らず恐怖ではなく悔しさで涙を流していた。おかげで左目の視界が少し赤いもやがかかった程度には戻っている。
窮鼠猫を噛む。
あたしは這ったままの体制で、道端に転がった鉄パイプに用心深く手を伸ばす。
しかし、タッチの差でそれはひょい、と先に拾われてしまっていた。
四つん這いになった血まみれのあたしが顔を上げると、目出し帽の男が仁王立ちになり、汚く黄ばんだ乱杭歯を見せてだらしなく笑っていた。
(…や…やってしまった)
やっぱり、馴れないことはするもんじゃない。
男が振り上げた鉄パイプに西日にギラッと反射する。
ここでもし殺されたら、コイツが自首するまで幽霊になって取り憑いてやる!…と思うのが精一杯の抵抗だ。
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