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「留置場で、さっきの犯人が自殺を図ったんじゃないかな?気ィ弱そうだったもん。あるいは取り調べ中の不審死…」
「ちょっ、漣斗。まさか…」
確かに犯人は許せないけど、捕まってすぐ死んでほしいとまではさすがに思えない。
「その場合は、どちらも『ホトケ』という言葉は使わないし、とっくに救急車くらい呼んでていいはずだけど外からはサイレン音やそれらしい類の音は聞こえない。…僕が思うに」
カイは応接室のテーブルの上に置いてあったチェス盤上の駒を動かしていた手を止めた…いかにも昭和の役所然とした室内にはどちらというと将棋盤の方が似合いそう。不似合いなほど本格的なチェス盤だが、インテリアのつもりなのかも。
カイは、急に話題を変えた。
「それはそうと愛莉、ストーカーに気づいたのはいつから?」
「え、愛莉に!?」
「ストーカー!?アイツが?」
心配をかけたくなかったから黙っていたんだけど…やっぱり、カイは見抜いていた。
「…2ヶ月くらい前、かな。でも、彼氏いない歴17年だし、恨まれるようなトラブルもないし、実害もなかったから…」
「何かあってからじゃ遅いんだよ。話してくれるよね?」
カイの真っ直ぐな瞳にあたしは頷いた。そして、ここ2ヶ月ほどの出来事を思い切って打ち明けた。
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