第2章

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俺はあの日、いつも通りに職務をこなしその日最後の仕事となる資料作成を終え、 パソコンのEnterキーをわざと大きく叩いた。 そのままメガネを外し、ぐーと腕を伸ばした。 真夜中の秘書室にいる人間は 俺一人。 しんと静まる部屋にキーを叩く音はやけに響いて聞こえた。 …のはずが一人いた。 「天野、終わった?」 開けっ放しだった扉から顔を出したのは俺の憧れの菊田涼介さん。 菊田さんは俺が新人の時に仕事を あれこれ教えてくれた、先輩。 当時の俺には、すごく眩しかった。 まだ慣れぬ仕事をこなす中、 菊田さんはイライラすることなく 何度も丁寧に教えてくれたり、 叱ってくれたり、励ましてくれた おもえば俺は環境に恵まれていたのだなと思う。
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