第2章

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しばらくすると、突如ドアが ガチャと開く音が聞こえた。 …というのも俺がそちらを見た時にはすでにそこにはもう誰もいなかったからだ。 代わりに何やらキッチンから人の気配がする。 俺は吸い込まれるように、そちらの方を覗き込んだ。 俺が見たのは、スプーンを口に咥えた大柄な男性。 右手にはプリンがあった。 そしてバッチリ目があった。 「あ…」 「あ…」 次のカシャーンという音で俺は我に返った。 床を見ると、スプーンがクルクルと回転し、やがて停止した。 「あ、あの、こんにちは」 上手い言葉が見つからなくて、そんな言葉しか口に出せない。 「………」 男性は黙ったままだった。 ジッと俺を見つめている。 それは、不審な目つきや観察しているという目つきではない。 彼は俺を呆然と見つめていた。 その内俺も穴があくほど見つめられるので何故か無性に恥ずかしくなって、 男性の腕に軽く触れた。 「あの…?」
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