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『あ、あの、陸様』
「はい?」
『えっと……もう晩ご飯、食べられました?』
「え、いえ。まだですけど」
『あの……ほんなら、今からうちに来ませんか?』
「…………え?」
唐突な申し出に驚き、陸は椅子に凭れていた体を起こした。
『うち、今からご飯の用意するので』
「………………」
『よかったら、その…。陸様、今から一緒にどうですか?』
恥ずかしそうに語尾の声を小さくしながら、千波はそう締めくくった。
先程までの不安も相まって、陸は無性に千波に会いたくなる。
急に気持ちが逸り出し、まだ返事もしていないのに陸はガタッと立ち上がった。
「じゃあ、今からお邪魔していいですか?」
するとすぐに、嬉しそうな千波の声が返ってきた。
『………はい。待ってます』
その返事を聞いてから、陸は電話を切って部屋を飛び出した。
そのまま台所へと向かう。
暖簾をくぐると、ちょうど友美と初枝が夕飯の用意をしている最中だった。
「あら陸さん。もうちょっとで用意できるから……」
「あ、いえ、そうじゃなくて……」
声をかけてきた友美に、陸は慌てて手を振った。
「あの…すみません。せっかく用意していただいて申し訳ないんですが、今からその…、千波さんのところでご馳走になることになって……」
「あら、そうなん?」
気分を害した様子もなく、友美も初枝も笑顔になる。
「どうぞどうぞ、行ってらっしゃい」
「……はい、すみません」
「嫌や、そんなん謝らんでもええのよ」
ころころと小気味良く友美は笑った。
陸は恐縮しながら軽く頭を下げる。
「それじゃあ、行ってきます」
「はーい、行ってらっしゃーい」
軽快な声に送られながら、陸は台所を後にした。

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