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「それじゃ、改めて。……陸、千波さん、婚約おめでとう」
恭しく証が言い、その横で柚子は慌ててグラスを手に取った。
証に倣うように軽くグラスを持ち上げ、はち切れそうな笑顔を陸と千波に向ける。
「五十嵐さん、千波さん。ご婚約、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
陸も穏やかにそれに応え、それを機に四人は乾杯を交わした。
「………で、いつ結婚するんだよ」
食事が始まってから、証が探るように陸に尋ねた。
陸と千波は一瞬目を合わせる。
「まだはっきりとは決めていないんですが。……まあ大体の予定では来年の春ぐらいかな」
ね?と同意を求められ、千波ははい、と頷く。
前菜を口に運びながら、証はふーんと言って何故か複雑そうな顔を見せた。
「いいよな、そっちは。なんか全てが順調で」
拗ねたような子供っぽい証の口調に、千波はあの日二人から聞いた話をぼんやりと思い返した。
(………そう言えば。……5年は結婚できないって言ってたっけ…。始めは証さんのお父さんに反対されてたって……)
考えに耽る千波の横で、陸がそっと苦笑した。
「俺達だって、ここに来るまでは色々ありましたよ。全てが順調だった訳じゃありません」
「そうなのか?」
「ええ。……でもまあ、そのお陰で絆は深まりましたけどね。証と柚子さんだってそうでしょう?」
やんわりと問い返され、証はバツが悪そうに肩をすくめた。
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