挨拶、各位。(東京編)

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結局、あれだけ頑なに拒んだにも関わらず、千波は陸に脱衣場で裸を晒してしまうはめになってしまった。 完全にのぼせてしまい、一人で着替えもできないほど体に力が入らなくなってしまったからだ。 「ごめん。気付かなくて」 千波の体を丁寧に拭きながら、陸は申し訳なさそうにそう言った。 千波はぼうっとしながら、小さく首を横に振る。 不思議とこの時は思考が霞み、さほど恥ずかしさは感じなかった。 バスローブを着せられ、千波は再び陸に抱き上げられた。 高級なタオル地のバスローブの感触と、陸の腕の中でゆらゆらと揺れる感覚が心地よくて、千波はそっと目を閉じた。 「水、持ってくるから」 千波をベッドに横たえさせてから、陸はどこかへと歩いていった。 千波はぼんやりと真っ白な天井を見上げる。 しばらくして、ペットボトルの水を手にした陸が戻ってきて千波の横に腰を下ろした。 柔らかいベッドが陸の重みで深く沈む。 「起き上がれる?」 「………はい」 陸に抱き起こされるような形で千波は半身を起こした。 口にした水はよく冷えていて、火照った体をスーッと中から冷やしていくようだった。 それに伴い、霞みがかっていた意識もはっきりしてくる。 「大丈夫?」 心配げに陸に顔を覗き込まれ、千波はコクリと頷いた。 「………ごめんなさい。……迷惑かけてしまって」 「いいよ。俺が悪い」 陸は手を伸ばして千波の頭を撫で、小さく苦笑した。 「千波の反応が可愛くて、ちょっとしつこくからかったから。……俺こそごめん」 千波の頭を引き寄せ、陸はコツンと額を合わせた。  
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