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「少し寝たら? 長距離移動で疲れたよね」
「え……でも」
今夜はこのホテルの最上階のレストランで、証達と会うことになっている。
そこで二人に、結婚の報告をするつもりだと陸から聞かされていた。
「約束は7時だから、まだ時間あるよ」
ふわりと笑い、陸は千波の髪を優しく撫でた。
何度も繰り返されるその行為が気持ちよくて、千波の瞼が重く下がってくる。
「………じゃあ、少しだけ」
「うん。起こしてあげるから、ゆっくり寝て」
小さく頷き、千波は言われるがままベッドに横になった。
目を閉じた瞬間、陸の大きな手が再び柔らかく千波の髪を梳く。
その手の心地よさと、慣れない長距離移動の疲れも相まって、千波はゆっくりとまどろみ始めた。
「今のうちに寝とかないと、今夜は寝かせてあげられないかもしれないからね」
紗がかかったような意識のなか、そう呟く陸の声を聞いた気がしたが。
襲い来る睡魔には抗えず、千波はそのまま深い眠りへと落ちていった……。
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