1186人が本棚に入れています
本棚に追加
※※※※※※※
「……み。……千波」
遥か遠くから自分の名を呼ぶ声が聞こえてきて、千波は重く閉じていた瞼をゆっくりと上げた。
一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなる。
「………ん」
「千波。そろそろ起きようか」
すぐ真上から声が降ってきて、千波はハッと目線をそちらへ向けた。
気が付くと、千波の体を囲うようにして陸が真上から千波を覗き込んでいた。
驚いた千波はひゃっと言って、布団を鼻の上まで引き上げる。
(そ、そっか……。東京におるんや、私……)
ようやく意識がはっきりしてきて、千波は恐る恐る陸の顔を見上げた。
「よく寝てたね。そんなに疲れた?」
「……え、いえ。……ベッドが気持ちよくて……」
目を擦りながら緩慢な仕草で起き上がった千波を見て、陸はクスッと笑った。
窓の外に目を向けると、もう随分暗くなってきている。
「陸さんは、ずっと起きてたんですか?」
寝ていた様子のない陸に問うと、陸はうん、と言って頷いた。
「 俺は夕食に着てく服を取りに行ってた」
「………え?」
キョトンと千波が首を傾げると、陸は少しいたずらっぽく笑った。
千波の手を取り、そっと体を引く。
「ちょっとこっち来て」
「……え。……あ」
慌てて千波は少しはだけていた胸元を押さえ、ベッドから足を下ろした。
陸はそのまま千波をクローゼットの前に連れて行く。
一度千波の顔を見てから意味深に笑み、陸はおもむろにクローゼットの扉を開けた。
その中に掛けられていた青いドレスを目にした千波は、大きく目を見開いた。
最初のコメントを投稿しよう!