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結局、最後まで千波が難色を示したため、二人はそのまま千波の家に直帰することにした。
陸が働き始めてから平日に会えることが少なくなったので、ここ最近土曜日は陸は必ず千波の家に泊まる。
少しずつ少しずつ、千波の家には陸の荷物が増えて。
それを見る度に千波は幸せを噛み締めるのだった。
(………喧嘩になんか、なりようがないんやもん)
行為が終わり。
陸に腕枕をしてもらいながら、千波は剥き出しの陸の胸にそっと寄り添った。
トクトクトク……と、まだ早い陸の鼓動が、千波の鼓膜を心地よく打つ。
部屋の冷房がよく効いていて、汗ばんだ肌を急激に冷やしていった。
タオルケットにくるまってぎゅっと陸にしがみつくと。
まだ呼吸の整わない陸は、少し笑って千波の肩を抱いた。
「結局、また汗かいちゃったね」
そう言いながら、するすると千波の髪を指で梳く。
全身全霊で陸の愛を感じられるこの瞬間が、本当に幸せで、愛しくて。
(喧嘩なんか、せぇへんにこしたことないよな……)
圭子に言われたことへの胸の蟠りを払拭するように、千波はますます陸の肌に頬を擦り寄せた。
それに応えるように、陸も千波の髪に顔を埋める。
無理矢理そう自分に言い聞かせた千波だったが。
意外にも早く、その機会は訪れることになる。
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