想うは、あなた一人。-2

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「え?」 「江崎さん家って、西町ですよね? 海岸のほう」 「……うん、そうやけど」 「俺、東町やから方向同じやし」 その言葉を受け、千波はもう一度そこからの景色を眺めた。 降りしきる雨粒は、アスファルトを抉る勢いで叩き付けている。 自転車で帰るなんてもってのほか。 バスも、次のダイヤまではかなり時間がある。 同じ方向なら、甘えてしまっても構わないだろうか…。 「……うん。……ほんなら、乗せてもらってもいいですか?」 「いいですよ。その代わり……」 川上はそこで一旦言葉を止め、千波の持っている傘に目を向けた。 「車んとこまで、傘に入れてもらっていいですか?」 「…………え」 「いやー、朝は降ってなかったから、傘持ってけぇへんかったんすよ」 バツが悪そうに頭を掻いた川上がまるで小学生男子のようで、千波はぷっと吹き出してしまった。 「はい、どうぞ」 「………すいません」 開いた傘を頭上にかざすと、川上はペコンと頭を下げて傘の中に入ってきた。 二人は並んで駐車場に向かって歩き始める。 屋根つきの駐車場にたどり着いた時には、雨の激しさのせいでお互いの肩はしっとりと濡れそぼっていた。  
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