想うは、あなた一人。-2

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「あ、あのっ! 同じ事務所の、川上さんです!」 「……………」 「帰る方向が同じやから、送ってくれるって言ってくれて…、それで、だから…、あ、雨も酷いし、バスもまだなかなか来ぇへんし……」 陸の射るような視線が痛くて、千波の言葉が徐々にトーンダウンしていく。 それがまるで言い訳をしているようで、千波はいたたまれない気持ちになった。 陸はそこでふっと息をつき、静かに川上に向き直った。 そうして深く頭を下げる。 「いつもお世話になっております、江崎の婚約者の五十嵐といいます」 ただならぬ雰囲気にソワソワしていた川上は、ギョッとしたように肩を跳ねさせた。 「あ、こ、こちらこそ! いつも江崎さんにはお世話になってます!」 慌てて陸に会釈を返し、直後川上は千波に苦い笑みを向けた。 「よかったやん、江崎さん。彼氏迎えに来てくれて」 「………うん」 「ほんなら、俺は帰るから」 お先、と言いながら手を上げて、川上はそそくさと車の中に乗り込んだ。 特に他意もなかったのに、思わぬ千波の彼氏の登場で気まずい思いをしているのは明白だった。 それが申し訳なくて、千波は運転席の川上に頭を下げる。 「お疲れ様でした」 そう言うと、川上は苦笑しながらペコリと会釈し、静かに車を発進させた。  
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