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「………ホントに? ホントに、二人目ができたの?」
「うん。7週目に入ったところやって」
「……っ、じゃあ、朝熱っぽいって言ってたのって……妊娠、してたから?」
千波が頷くと同時に、陸は千波の体を思いっきり抱きしめていた。
陽菜はびっくりしたように、陸の顔を見上げる。
虚を衝かれた千波も、陸の腕の中で軽く身じろいだ。
「り、陸さん。……陽菜、抱きつぶれちゃう」
「うわ、やべぇ。……すげぇ嬉しい」
陸は感極まったように千波の耳元で声を震わせた。
「夢だったんだ、自分の子供に兄弟作ってやるの。……俺、一人っ子だったから」
そう言葉を紡いだ後、陸はそっと千波の体を引き離した。
目を潤ませ、優しく微笑む。
「ーーーーありがとう、千波」
陸のその表情を見て千波は貰い泣きしてしまいそうになり、慌てて指で目元を拭った。
「お礼言うなんて、変やわ。二人の子供やのに」
「そう……だけど」
「ほら、もう帰ろ。ご飯作らなあかんし」
徳島の向こうに少しずつ陽が沈んでいき、徐々に辺りは薄暗くなり始めていた。
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