ルミナリエの誓い

2/22
1069人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「次の日曜に、行きたいところがあるんです」 結婚式の日取りや新居のことなど、具体的なことが決まり始めた12月の頭。 レストランで一緒に夕食を取っていた最中、少し緊張の面持ちで、千波が陸にそう切り出した。 既に食事を終えコーヒーに口を付けていた陸は、カップを置きながら千波の顔を見返す。 「いいけど。……行きたい所って?」 すると、千波の表情がほんの少し強張ったように見えた。 陸は怪訝に思い、首を傾げる。 「神戸の……ルミナリエ、です」 ポツン、と。 千波は陸の手元辺りを見つめたままそう呟いた。 それを聞いた陸は拍子抜けする。 ルミナリエといえば神戸の旧居留地をイルミネーションが飾る、定番のデートスポットだ。 千波の様子からしてもっと違う場所を想像していた陸は、思わずのように千波に笑いかけた。 「いいよ。俺、行ったことなかったから、一度行ってみたかったんだ」 即答すると、千波はゆっくりと目線を上げた。 陸の顔を見つめ、小さく微笑む。 「私も、行ったことないんです」 「…………え?」 意外な言葉に、陸は目を見開いた。 関東に住んでいた自分とは違い、淡路ならすぐに足を伸ばせそうなのに。 「……………」 そこまで考えて、陸はハッとした。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!