1069人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「次の日曜に、行きたいところがあるんです」
結婚式の日取りや新居のことなど、具体的なことが決まり始めた12月の頭。
レストランで一緒に夕食を取っていた最中、少し緊張の面持ちで、千波が陸にそう切り出した。
既に食事を終えコーヒーに口を付けていた陸は、カップを置きながら千波の顔を見返す。
「いいけど。……行きたい所って?」
すると、千波の表情がほんの少し強張ったように見えた。
陸は怪訝に思い、首を傾げる。
「神戸の……ルミナリエ、です」
ポツン、と。
千波は陸の手元辺りを見つめたままそう呟いた。
それを聞いた陸は拍子抜けする。
ルミナリエといえば神戸の旧居留地をイルミネーションが飾る、定番のデートスポットだ。
千波の様子からしてもっと違う場所を想像していた陸は、思わずのように千波に笑いかけた。
「いいよ。俺、行ったことなかったから、一度行ってみたかったんだ」
即答すると、千波はゆっくりと目線を上げた。
陸の顔を見つめ、小さく微笑む。
「私も、行ったことないんです」
「…………え?」
意外な言葉に、陸は目を見開いた。
関東に住んでいた自分とは違い、淡路ならすぐに足を伸ばせそうなのに。
「……………」
そこまで考えて、陸はハッとした。
最初のコメントを投稿しよう!