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「部活の帰りか?」
「うん、そう」
「久し振りやなー。だいぶ背伸びたんちゃうんか?」
「うん。この一月で5センチ伸びた」
「うわ、マジか。……俺そのうち追い越されそうやな」
中3男子の急成長に、俺は思わず苦笑してしまう。
広空は陽菜と違ってうちに入り浸ったりしないから、家が近いとはいえそうそう滅多に会うことはない。
この分だと、次に会った時はマジで身長越されてるかもしれないな。
それからその場で少し立ち話をして、いざ別れようかという段になって。
ふと、陽菜のことが頭を過ぎった。
再び自転車に跨がった広空に、躊躇いながら声をかける。
「………なあ、広空」
「え?」
「陽菜……なんかあったんか?」
唐突な質問に、広空はキョトンとした。
背ばっかりでかくなったけど、こんな表情はまだまだあどけない。
「なんかって?」
「いや、うちに来る回数減ったし……たまに来ても、なんかちょっと元気ないみたいな気がしたから」
すると広空は首を傾げながら、少し瞳をさまよわせた。
「うーん。なんぼ姉ちゃんが能天気や言うても、あれで一応受験生やからなぁ。色々考えることがあるんかも」
「………そうか」
もっともな答えに、俺はそう相槌を返すしかなかった。
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