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何となく、ピンとこない。
長年一緒に過ごしてきた勘というのだろうか。
あの陽菜が、受験のことなんかで浮き沈みするような性格には思えないのだが。
「………ああ、そう言えば」
そこで何かに思い当たったように、広空が俺に向き直った。
「2ヶ月ぐらい前に、姉ちゃんとこに男が来たことあった」
「……………」
思いがけない言葉に、俺は広空の顔を凝視する。
「………は? 男?」
「うん。告白されとったみたいやで?」
広空はケロッとした口調で言ったが、俺は自分でも驚くぐらいに衝撃を受けていた。
………陽菜が、告白された?
「結構熱心に口説かれてるみたいで、オカンにこの前相談しとった」
「……………」
「もしかしたら、それで少し悩んでるんかも」
確証がないのか、広空は自信なさげにそう言った。
堤防の向こうに見える海のように、何故か俺の心がザワザワと波立ち始める。
…………なんだ、これ。
そんな俺の様子に気付かず、広空はニコッと俺に笑いかけた。
「よかったやん、兄ちゃん。これで姉ちゃんの猛烈アタックから解放されるかもしらんで」
冗談半分の広空の口調に、俺は無言で苦笑を返した。
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