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「大ちゃん! お帰りなさい!」
「……………」
バタン!とドアを開けて部屋に飛び込んできたのは、従兄弟である陸兄ちゃんの娘の陽菜だった。
俺は思わずこめかみに手を置いて、のっそりとベッドに半身を起こす。
「………来てたんか、陽菜」
「うん! お疲れ様っ」
ピョイとベッドに飛び乗り、陽菜は明るくそう言った。
………お疲れだと思ってるなら、ゆっくり休ませてくれればいいのに。
無邪気に笑う陽菜の顔を見ながら、俺は大きく溜め息をついた。
五十嵐 陽菜。17才。
陸兄ちゃんと、千波さんの娘。
生まれた時から知ってるから、もうほとんど妹のような感覚なのだが。
どうやら陽菜は、違うらしい。
そもそもの事の発端は、10年前の陽菜からの逆プロポーズ。
新年会の集まりの席で、突然陽菜が俺に向かってこう言った。
『私、大ちゃんのお嫁さんになるから!』
当時、7才の陽菜のその台詞は端から見ればとても微笑ましいものだった。
あら、大地くんいいわねー、もうお嫁さん決まったわね、なんて軽口を叩かれて。
もちろん俺も陽菜は可愛かったから、あまり本気にせずに
『うん、いーよ』
と、答えてしまったのだけど。
周りの思惑とは裏腹に、陽菜は大真面目だったらしく。
未だにその口約束を固く信じてしまっているのだ。
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