大地と、陽菜。

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「大ちゃん、なんかお化粧臭い」 不意に陽菜がそう言い、俺のシャツに顔を近付けてきた。 俺は無意識に上体を反らしてしまう。 「は?」 「なんか香水とか……女の人の匂いがする」 ジトッとした目で睨み上げられ、俺は思わず陽菜から目を逸らしてしまった。 「……ああ。今日、事務所に女のお客さん来たから」 「ホンマに~? まさか浮気と違うやろねぇ?」 「ホンマや。大体、浮気って言うな、人聞きの悪い」 別に恋人同士でもないのに、なんでこんな風に探りを入れられ、はたまた言い訳みたいなことを言わなければならないのか。 どうにも腑に落ちなくて、俺はつい突っ慳貪な口調になる。 「だーって大ちゃん、過去に2回も浮気したことあるやんか」 「………普通に彼女作っただけや」 「でも結局合わへんくて別れたやんか」 「……………」 「ええねん、私は大ちゃんの港やから。結局、大ちゃんは最後には私のところに戻ってくるってわかってるし」 悦に入った様子で語る陽菜を、俺は半ば諦めの境地で見つめていた。 ………ガキのくせに、どこでこんな演歌の歌詞みたいな台詞を覚えてくるんだろう。  
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