第二話~所在無き心が揺らぎをもたらす~

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 一つはセドリックの右隣、一つはピールの左隣だ。会議室へ入ったことはなかったがピールがセドリックの席についている可能性を考慮するとピール百人隊長の隣はエドガール陛下の席だろう。恐れ多いと考えもう一つの席へ向かおうとし、そこで思いとどまった。国王陛下が座す席に対して右隣四席が上将軍達の席だとする。ユーゴ将軍がピール隊長の左隣に座っていることを見ても可能性は高い。つまり国王の席より左三席が神官職のものとなるわけであり、その中にはあの脂ぎった変態神官が重い尻を載せていた汚れた椅子があることになる。セドリック神官は自身の椅子に座っているだろうし、セドリック横の空きはロイクの物かもしれない。将軍席に千人隊長達が座っている今、あまり気にしては負けだと考え素早くピールの隣に座る。  ピールに短く挨拶され同様に返す。鎧から身綺麗なシャツへ変わっているだけで髪や顔に土埃は残っているものの血は拭われており、赤い汚れが目に付かないだけで随分と清潔に感じた。身だしなみを整えつつもこの場に集まる中で最も下の立場である自分が遅れないようにと急いだのだろう。ユーゴ将軍を始めとし他の千人隊長達は顔はさっぱりとしていた。濡れた手拭いか何かで拭いたのだろう。流石に髪のほうはピールと同様汚れていたが。  そこまで観察して気づく。現在この場にいるのは七人。姫付侍女イオン、神官セドリック、上将軍ユーゴ、千人隊長オーバン、フランク、マルコ、そして百人隊長ピール。 「失礼致します」  カチャリと扉が開けられる。先の六人と同じようにイオンも入室者へと視線を向けると、立っていたのは案の定最後の千人隊長エディ。頭のてっぺんから爪先まで清潔そのもので、頬は赤く上気し、この国特有の白い髪は濡れており肩には手拭いをかけている。身も心もさっぱりした様子で気分もよさげだ。 「っと、私が最後でしたか。遅くなりました」  一つを除いて全ての席が埋まっていることに気づいたエディは簡単に謝罪をしつつ椅子に向かうが、彼がそこへ到着するよりも先に空席の真向かいに座したユーゴが口を開いた。 「一番最後に入室とはいい身分だな、エディ千人隊長?」 「っ」  ジロリと睨まれ動きを止めるエディ。 「確かに会議は大事な席だ。身だしなみを整える必要もある。だがその上で時間も気にかける必要があるのではないか?」 「はっ……」
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