第1章

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日曜日、約束の朝9時に恵美の家に行くと、家の外まで赤ちゃんの鳴き声が聞こえていた。 家の中には赤ちゃんを抱えて涙ぐんでいる恵美。 「あのね、カズ君泣き止まないの。」 生後1ヶ月もしないカズ君は、火のついた様にギャーギャーと泣いていた。 「ミルクは?」 「あげた」 「オムツは?」 「替えた」 「じゃあ…」 恵美の涙ぐんだ不安そうな顔を見て、僕はニヤリと微笑んだ。 「きっと泣きたい気分なんだよ。」 僕は恵美から赤ちゃんを預かると、服の気持ち悪そうな所が無いかを確認した。 そして汗をびっしょりかいているその首もとのボタンを2つ開けて、抱っこしながらユラユラと部屋の中を歩いてあげた。 赤ちゃんは徐々に泣くのを諦め、眠りについていく。 「すごーい!」 恵美が小さな声で僕を褒めた。
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