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そりゃそうか、僕が来ている事を知らなかったんだから。
僕は後から恵美が怒られない様に言葉を加えた。
「僕が勝手に押し掛けたんだ。
赤ちゃんが見たくてね。」
僕は手早く靴を履くと、玄関扉に手を掛けた。
「待って!お父さん!
帰らないで!」
恵美が走って玄関に来た。
僕は手を振って帰ろうとしたが、恵美は僕の腕をギュッと掴み離さなかった。
「ねえ、お母さん!
お父さん帰さないで!」
恵美の母親は、いや、元妻は、僕の顔をジッと見て震える声で言った。
「あなた、恵美もこう言っている事だし、家に上がってちょうだい。」
ちょっとした押し問答はあったが、僕は諦めて再び家に上がる事にした。
恵美に握られていた腕がジンジンと痛かったのは、内緒の話だ。
僕はダイニングで座らされると、タイミング良くカズ君が泣き始めた。
「有紀さんは?」
元妻は有紀さん、カズの母親を探した。
「お出掛け中。」
恵美はさらっと言った。
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