第4章 新緑のように鮮やかな

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「サンドイッチ、買う時っていうか」 「……」 「駅前の人達を眺める牧さんはもっと楽しそうでしたよ」 「……」 そんなつもりはなかった。 楽しいな、と実感しながら、朝の光景を眺めることなんてなかったのに、彼にはそんなふうに見えていた。 「歳、いくつですっけ?」 「え? あー……」 なんで言いよどむんだろう。 彼に年齢を訊かれたところで、その範囲にはそもそも入れていないのに。 性別という時点で。 だから何も躊躇うことなく 「三十八」 だと答えればいいのに どうしてか年齢を告げた後の彼の反応を気にしてしまう。 「可愛くないっすか?」 「は?」 「三十八なのに、駅へと走る人を見かけては、なんかテレビ中継のマラソンを応援するみたいに見つめるのって」 「……」 知らないふりをしたい。 こういう感情から遠ざかりたくて、あの場所でサンドイッチを売っているはずなのに。 「んで、そういうの見て、俺もなんか楽しくて」 「……」 「で、サンドイッチを買ったんです」 そしたら、驚くくらいに美味くてやみつきになりました。 笑って話す佐野君に、卵ばかり食べて、栄養取りすぎだぞと、また年寄りくさく忠告したら、アハハと平日の穏やかな店の中で目立つほど楽しげに笑っていた。
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