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たかられている、んだろうか。
「いつもこういうところで前はランチしてたんすか?」
「まさか、そんなことしてたら、いくら給料もらってたってすぐになくなるだろ」
午前いっぱいが休講になった佐野君は自宅アパートに帰るのも面倒だしと、またひとりごとなんだか、俺に話しているんだか、とにかくそう言ったまま隣にいた。
――じゃあ
昼でも一緒にどう?
その言葉を言う必要なんてなかったのだけれど、隣でじっと待たれていたら、つい口から零れてしまっていた。
取り消すことを許さない速さでおおはしゃぎして、ちょうど腹が減っていたんだと笑顔で言われたら
もう仕方がないだろ。
どっちにしても
俺だって昼食をどこかで済ませようと思っていたわけだし。
彼のおかげで、思っていた以上に早く服を買い揃えることができたんだし。
ひとりだったら、何がいいのかあまりわからず
うーんと唸ったまま立ち尽くしてしまう。
若干、彼の選んだ服はスーツばかりに慣れている俺には派手なように思えるけれど、俺のためを思って選んでくれたというのは簡単にわかった。
イケメンと騒がれるだろう、少し派手な彼の顔立ちには地味に思える淡い色のシャツ。
自分のクローゼットにはない色ばかりだったけれど
たしかに彼に言われるまま
鏡で合わせてみれば似合っている
とは思った。
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