4513人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
そしてただのチャーハンにポテトサラダ、それからソーセージ。
そんな平凡な食事が最高に美味しい一品に思えてしまった。
「もっと、餌付け、お願いします」
「ちゃんと食べなさい」
「あ~ん♪」
そして彼の笑顔で腹いっぱいになれそうな気がしてきた。
片手が不自由だと食事もだけれど、食器も洗えない。
着替えだって手間取るだろう。
コンタクトだったっけ。
そしたら余計に色々面倒なことが多いかもしれない。
「佐野君」
食器をしまうのならできると、隣に立つ彼へ顔は向けずに、手元だけを見つめて
ひとつの提案をする。
俯いてしまえば、背の高い彼から、俺の表情を伺えないだろうから。
「手がいくらか平気になるまで」
今
彼はどんな表情をしているだろう。
さっきの食事の時のように
次の一口が自分の口元まで運ばれるのをワクワクしながら待っていた時のように
笑っていてくれたらいいけれど。
「その、うちでしばらく一緒に生活っていうのはどうだろう」
べ、別にうちは全然それでかまわない。
幸いベッドは広いから、ふたりで充分眠れることは、この前、君が泊まっていった時にもわかったし。
料理だって、その手じゃ作るのは大変だ。
かといって、毎回コンビニ弁当や外食っていうのじゃ、食費はかさむし
身体に良いとは決して言えないから。
うちは全然、本当にかまわないんだ。
君ひとり分の食費が増えたところでどうにでもなる。
ただ、右手がそれじゃあ日々の生活で色々大変だろうから
その
付き合っているのだし
俺で手伝えることがあれば、いくらでも助けになりたいなって。
一気に、全てを話した。
最初のコメントを投稿しよう!