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「ハニ……いえ、霧谷さん。
この方は、どなたですか?
あなたの専門分野は確か『液晶画面』の研究で、海とは、全く関係ないはずじゃありませんでしたっけ?」
せっかくのハニーとの時間を台無しにされそうな予感がして、よそいきに出した声が尖るのが、自分でもわかる。
不安な気持ちから一気に不愉快になった僕の機嫌を敏感に察知して、ハニーがすまん、と両手を合わせた。
「彼は、助手だ。
職場でも私のスケジュール管理を担当してる部下で、佐藤明仁(さとう あきひと)という」
ハニーの紹介に、佐藤は軽く頭を下げた。
「私が現在研究しているのは、眼鏡なしで見ることができる、3D対応立体画面の研究だ。
つい最近、その画面に適したプラスチックが、海藻から出来ることが、判明した。
だから、私は佐藤君と最適な海藻を探して、世界中あちこちを歩いてもいるのだが……」
そう手短に説明してハニーは、佐藤に向き直った。
「私は本当に休暇だ。
例の海藻は、北半球と、赤道直下のみに生息していて、現在は南半球には確認されてない。
だから、仕事が追いかけてこないように、私は休暇の場所を、他でもない、オーストラリアに選んだつもりだったのだが?」
そんなハニーの言葉に、佐藤は、にこにこと笑った。
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