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「もしかして、相模さんも転職組ですか?」
いかにも、興味しんしん、といった具合に聞いて来る佐藤に、僕は肩をすくめてみせた。
「ええ、そうですよ。
……以前は、水商売を少し」
「水商売!
もしかして、ホストとかやってたんじゃないですか!?
いやー、相模さん女の子にモテるでしょう?
ちょっと見ないほど、キレイな顔立ちをしている上、垢ぬけててカッコイイですし。
男のくせに、なんだか妙な色気があるじゃないですか。
……ってあはは~~
キレイだの、色気があるだの、なんて男に言う褒め言葉じゃないですね。
すみません~~」
手を振り回し、屈託なく笑う佐藤の声を聞きながら、僕は、心の中でそっと自分を嘲笑う。
ホストか。
……ホストね。
僕は、そんな上品な仕事を、してたわけじゃない……!
なんて、口の中で呟けば、僕の心の中に、雪が降る。
深々と凍えるように降り積もる記憶は、僕の心の傷だったから。
何も、初対面のコイツに話して聞かせることじゃなく。
僕は、一瞬だけ目を伏せると、あとは、ふてぶてしく見えるように、まあね、と言って笑った。
「ま、僕の過去の事なんて、どうでも良いです。
それより、僕は霧谷さんが『晩さん会』に出る予定なんて『全く』知りませんでしたから。
霧谷さんが飲む薬の服用時間の計画を変更する必要が出てきました。
……パーティの開始時間は、何時から、ですか?」
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