恋人達の午後

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 スキューバ・ダイビングの限界深度。  だいたい、海面から三十メートル下近いのに、海中は、びっくりするほど明るかった。  珊瑚が砕かれて出来た、白い砂の海底から海面を見上げれば、陽の光が、カーテンのように揺れて、とてもキレイだ。  そこに、僕のついたため息が、丸い空気の泡になって、忙しいシャボン玉のように浮き上がる。  その先に、見慣れた長身のダイバーが、僕に向かって手を振っていた。  必ず、二人一組で潜る決まりになっているスキューバでも、僕のバデイ(相棒)になっているハニーだ。  彼は、まるで海を司る王さまのように、色とりどりの魚を引き連れ、従えて泳いでいる。  ハニーの撒く餌に群がる細かい魚たちは、まるでマントのように広がって、面白かった。  泳ぎを止めると、どわっと魚たちに埋もれてる。  こんな、とても幸せな光景は例え、水族館にある世界一巨大で豪華な水槽でも、きっと絶対適わない。  しばらく泳いでいるうちに、見つけた座布団よりでっかいマンタ(エイ)をハニーと一緒にからかっているうちに、楽しい時間は、あっという間に過ぎた。
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