影フタツ

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◇美帆 お互い地元を離れて東京に移り住んでいた。 再会した私達は、週に1度だけ会うようになった。 彼の仕事が終わった後の2時間。 それが私達に与えられた禁断の時間。 私の旦那はいつも仕事の関係で帰りが午前様。 私は仕事をしていない。 おまけに子供もいなかったので、比較的自由がきいた。 別に旦那との仲が悪かった訳ではない。 むしろ良いほうだ。 ……だけど、彼と久しぶりに会った時に感じたあの胸の高鳴りは、私の弱い心を簡単に揺さぶった。 もちろん旦那に対する罪悪感はある。 それでも彼と会う度に感じるあの感覚は、まるで麻薬のように私を狂わせた。 「どうしても? どうしても終わりにしないとダメなの?」 隅田川沿いにある隅田公園。 春には桜百選にも選ばれるほどの見事な桜が咲き、夏には都会の空を鮮やかに彩る無数の花火が咲く公園。 その公園の一角に私達はいる。 「……うん。もう決めたんだ」 彼がそう言った時に冷たい風が吹いた。 まるで氷の手で撫でられたかのような冷たさを頬に感じた。 私の短い髪が揺れた。
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