影フタツ

5/13
前へ
/15ページ
次へ
◆康介 彼女との別れをはっきりと決意したのは2週間前。 とは言ってもこれと言った理由などはない。 ただ単にこのままではダメだと思ったから。 彼女との秘密の関係は今日まで2年間続いた。 彼女が本当のカノジョとして俺のそばにいた期間も2年間。 もしかしたら彼女とは2年以上は付き合えない運命なのかもしれない。 ……いや。 この場合、運命という言葉はあまりにも綺麗すぎる。 運命なんかではなくもっと簡単な、それでいて自分に都合の良い話。 自分がズルい男だと十分わかっている。 結局俺は、彼女のことを本当に心から愛することが出来なかったんだ。 「……ねえ、康介」 彼女が少し潤んだ瞳で俺を見つめる。 「……私、どうすれば良いの?」 俺はズルい男だ。 しかし、それと同時に彼女もまたズルい女なのだ。 俺には、……俺達には帰るべき場所があり、そして裏切ってはいけない人がいる。 「どうもしなくて良いんだよ。もう終わりなんだから……」 秘密を持つということは疲れることだ。 そのことにきっと彼女も気付いているはず。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加