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◆康介
彼女との別れをはっきりと決意したのは2週間前。
とは言ってもこれと言った理由などはない。
ただ単にこのままではダメだと思ったから。
彼女との秘密の関係は今日まで2年間続いた。
彼女が本当のカノジョとして俺のそばにいた期間も2年間。
もしかしたら彼女とは2年以上は付き合えない運命なのかもしれない。
……いや。
この場合、運命という言葉はあまりにも綺麗すぎる。
運命なんかではなくもっと簡単な、それでいて自分に都合の良い話。
自分がズルい男だと十分わかっている。
結局俺は、彼女のことを本当に心から愛することが出来なかったんだ。
「……ねえ、康介」
彼女が少し潤んだ瞳で俺を見つめる。
「……私、どうすれば良いの?」
俺はズルい男だ。
しかし、それと同時に彼女もまたズルい女なのだ。
俺には、……俺達には帰るべき場所があり、そして裏切ってはいけない人がいる。
「どうもしなくて良いんだよ。もう終わりなんだから……」
秘密を持つということは疲れることだ。
そのことにきっと彼女も気付いているはず。
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