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◇美帆
私達が立っているすぐそばに早咲きの桜達が植えられている。
十月桜、冬桜、河津桜。
今は十月桜と冬桜が見頃だった。
共に白い花を咲かせている。
一見すると同じに見えるがよく見ると花弁の数が違うことが分かる。
この桜達は1年に2度、その白い花を咲かす。
春と冬の2回。
まるで私達のようだ。
しかしこの桜達は年に2回以上は花を咲かせない。
私達はどうなのだろう。
分かっている。
もし今回散ることになるならば、もう次はない。
あってはダメなんだと。
もう咲くことは許されない。
「……分かった」
私ははっきりとそう告げた。
彼は少し驚いた表情をしていた。
私があまりにも素直だったから驚いたのだろう。
彼にはこれ以上カッコ悪い姿を見せたくはなかった。
長くは続かないと思っていた恋。
そのタイムリミットが来ただけ。
私はずっと握っていた彼のスーツの袖口をそっと離した。
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