一度しか体験できず、その体験は決して自分の記憶に残らない

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「あの人はね、お星様になったんだよ。」 よく、童話や何かの物語でこの世から亡くなってしまった人のことを小さい子供に教えるときに大人が使う言葉です。 実際に聞いたことがあるでしょうか? 私はありませんでした。15年間生きてきた中で実際にこの言葉を大人の口から聞いたことはありませんでした。そもそも、亡くなってしまった人を口にし、「あの人はどこへ行ってしまったの?」なんて言葉も私自身口にしたことはありませんでした。 幼かった私でも、なんとなく亡くなってしまった人の行方を大人に聞くのはタブーだと悟ってはいました。 私は少々ひねくれた性格でしたので、亡くなった人がお星様になるなんて話はあるはず無いと思っていたことも理由のひとつです。 私が実際に亡くなってしまった方の遺体を見たのは小学生のときでした。 ドラマやなんかでは「冷たくなっている。」や、「青白い。」などといった表現をされますが、その表現が本当だったんだと知ったのはそのときでした。 その人は、何回かあったことのある親戚の方でした。 いくつだったかはわかりませんが、長生きをされた方でした。 母親に連れられて、病院に駆けつけたときにはベッドで静かに目を閉じている姿でした。 看護婦さんが、「安らかに眠っていきましたよ。」と言いその方を見つめていました。 私は、その人の手に触れました。 ・・・冷たい。 そう感じました。冬に手が冷たくなるのとはまた違った冷たさでした。しわくちゃでふわふわしていた生前の手とはまるで異なり、硬く冷たかったです。 頬にも触れました。やっぱり冷たかったです。手と同様、硬くて冷たかったです。 ・・・その日からでした。 私にある疑問が浮かび上がったのは。 「・・・死んでしまったら、自身の魂はどこへ行くのだろうか。」 皆さんも考えたことがあるのではないでしょうか。 本当に死んでしまった人が星になってしまっているのだったら、今頃の私たちの世界の空には隙間が無いほどの星で埋め尽くされているはずです。 星になるわけではないと知っているあなたたちは、死後の世界をどうイメージしますか?天国というところですか?それとも地獄というところですか? 私はどちらも違うと思うんです。 天国や地獄など存在せず、死んだ瞬間にまた新しい命に成り代わるんじゃないかと思うんです。
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